がんばれ、老人力!

東京都知事選の選挙運動の真っ最中だ。
猪瀬前都知事の辞任で、思いがけず世の中に少し刺激が生まれた。
それも安倍政権や、霞が関を揺さぶるような「抵抗勢力」であることが愉快だ。
「殿、ご乱心」と言わしめた、細川前総理の76歳の出馬のメッセージは何だろうか。
その細川さんを全面的に支えるのも前総理大臣の小泉純一郎氏。
二人の総理経験者が、今世間の人たちに訴えなければならない現実を考える。
私の母は、昭和7年生まれの81歳。戦中派である。母が還暦を迎えた時に「孫や子の将来」
を案じて市民運動に参加していったことは、今でもその行動力に感心する。普通の専業主婦
だった母が今の私の年齢となって、社会参加をし始めたのは、限りある人生において「今
自分にできること」への使命感からだったように思う。
そして、まず食物の安全性から始まり、行政の不条理に義憤を感じ、市民オンブズマン活動
などでも活躍した。また大前研一さんの「国民主権」の平成維新を実現する会にも参加し、
今振り返ってもよくやったな…と感心するくらい社会活動にかかわっていた。今は年老いて、
勇退したが、心情は当時と変わらず、社会を見つめる視線は今も変わらないようだ。
そんな母や、今もなお、続けておられるお仲間もみんな年を重ねられた。
見まわしてみると、市民運動も母たちに続く世代が育っていない。
それは、伝統的な技を継承することや、文化・芸能活動もしかりで、後継者の不在は
どの分野でも同じ状況のようだ。なぜ、世代観ギャップが生まれてしまったのだろう。
戦争や被爆体験などや、平和・社会運動などで、活動されている人たちは、高齢化され、
激動の昭和時代を生き抜いてきた経験を語り伝えていく使命を強く、余生に託しておられる。
万葉のお仲間を見回しても、積極的に歩き、参加し、感動を求められる方々は60代以上の
方々だ。
「昔の日本はよかった」と懐古趣味ではなく、昔の日本と違い、「今はどこに向かって
行こうとしているのか」「日本人であることの誇り」「これからの日本ために」と、
愛国心や政治の貧困、社会の腐敗、教育の未熟を日々不安に感じておられる方々が、
まさに母たちの世代なのだ。
人生で体験されてきた激動の昭和時代を語り継ぎ、その経験を踏まえて教訓としたり、
同じ轍を踏むことなく…という切実な思いを私たち子どもたちはしっかり受け止めて
いるだろうか、理解できているだろうか、はなはだ疑問である。
戦争や被爆、被災や現実が何もかも風化しようとしている。
私はいろんな場面で70代、80代の方々の行動力やパワーに遭遇することが、偶然だとは
思わない。戦後の日本を支えてきた人々が、未だに日本を支えていたのだ。
細川さんが、政界を引退した時に「野に下っても違った角度から日本のために尽力を
惜しまない」と言われていた通り、今日まで環境運動やNPO活動で水面下で活動されて
きたようだ。
東北大震災を経て、福島原発の被爆地は未だ解決も見ていないのに、東京電力を税金で
支えて、検証もなく日本の他地域の原発を再稼働しようとしている政府、交付補助金に
頼る自治体の様子を見ていると、日本は誰のための国家であるのか問いたくなる。
「原発廃止」を明確に掲げて「一石を投じた」二人の元総理の勇気をたたえたい。
たとえ当選できなくても多くの「老人パワー」の行動がお二人に象徴されているように
思えてならない。
私は選挙の結果もそうだが、東京都民の意識に注目している。