味ほんざわが、閉店しました。

娘が8年間アルバイトで御世話になっていた京料理の店「味ほんざわ」が、
8月18日をもって閉店された。
市内の繁華街から離れた、京都の上京区の荒神口にあって、10年以上も続いたお店だった。
娘が演劇仲間から紹介してもらったアルバイトだったが、きびしい大将に叱られ、鍛えられ
ながらも、大将のお人柄や、いい客筋、本物の食材、美しい日本料理などに出会わせてもらって、
働くことを誇りに感じていたお店だったので、娘のお店自慢に、私や家族や友人も誘って、
何度か食事に行ったものだ。
このたびの閉店の知らせは、娘も間際に知らされたようで、現実が受け止められないまま
私に連絡をくれた。もちろん私が心残りであろうことを知っての連絡だった。
「閉店まで、あと1週間!」と聞き、娘と時間をすり合わすことができたのが、閉店の
最終日となる18日だった。
昨年で開店10年を迎えられたと聞き、大将一人で仕入れから、調理まで、休むことなく
よくがんばってこられたな!と本当に感心したばかりだった。
高価だったが、間人かにも食べたし、季節ごとのお刺身の盛り合わせは、種類も多くて、
お刺身が苦手な私も「美しさ」に圧倒されたものだ。めずらしい京野菜もいろいろ
教えて頂いたし、食べることもできた。娘が「まかないの食事」で、役得で貴重なものを
食べさせてもらったり、栄養補給や、健康管理して頂いていたことを心から感謝している。
大将は、故郷の東京へ帰られて、10月からは短大の教壇に立たれるそうだ。
「現場」から感じる現代の食育について、学びと社会への還元を考えておられたようだ。
お店を切り盛りしておられる間は、それ以上のことができないとおっしゃっていたが、
「夢」「目標」「生きがい」など、自身の人生を考えられての決断だったのだろう。
私も娘も残念で仕方がないけれど、大将が「納得の人生のための閉店」なら仕方がない。
今後のご活躍を心から願いたいと思う。
あの職人気質で、無愛想?な大将が、学生を相手にどのような講義や実習をされるか、
楽しみだ。娘にきびしかったように、きびしく導くのもいいかも。聞く耳を持つ者には届く。
私と娘は、ひとくちずつ惜しむように賞味しながら、食事をし、娘には最後のお手伝いを
するように…残して私は先に店を出た。本当に今日で最後?
娘は、きっと感極まって、涙なしでは別れられないだろうな…と思いながら。
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娘は今年大きな転機を迎えた。2月には、10年間住んだアパートが、古いので解体するために、
立ち退きという形で解約となり、新たな住まいに転居した。
引っ越して何か月もたたないうちに「通りがかったらアパートがなくなってた!」という
淡々とした、娘からのメール。添付の写真には更地が写されていた。
私の方が泣きそうになった。何だか、10年の営みが幻のように思えた。
そして、思いがけない大好きなお店の閉店。
人生って、永遠はないのだ。ある日思いがけないことも起こりうる日々なのだ。
ただ、一時の寂しさ、切なさはあってもそのことをきっかけに「前進」できることは、
幸せなことかもしれない。私の娘である限りは、それを原動力にできるはずだ。
ほんざわさんの今後のご精進とご活躍を心からお祈りしております。
娘がお世話様になりまして、ありがとうございました。…しかし、残念。


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