菊の香に寄せる感謝♡

2014年の秋から明日香村にある恩師を顕彰した記念館、犬養万葉記念館の指定管理者となって丸4年が経った。4月の2期目からはお引き受けする条件として、記念館での勤務については自由にということで、老両親が心だよりにしていることもあり、館長講座やイベント日などに限り行き来しているのが現状だ。2期目になり、スタッフたちの努力のおかげもあり、記念館の日常が軌道に乗ってきたことは大変ありがたいことだ。
2014年の秋、あわただしくスタートした時から犬養万葉記念館に素晴らしい菊の花をご提供頂き、入館してくださった方々を楽しませてくださったが、以来毎年必ず季節になると声をかけてくださる河合幸子さん。あつかましい私は「ぜひおかせてください」とおねだりし、1期期間中の3年間毎年丹精して育てられた菊の花を楽しませていただいた。そして4年目の今日、記念館に再び菊の花を届けてくださったが、「先生、明日香で菊の花を作る人が、もう3人になってしまいました。高松塚で開催していた展示会ももう無くなりました。」とのこと。「1本ずつ命名された菊の花」を育て上げることの大変さは、時間と労力と愛情の賜物だ。高齢化も一因であると思うが、4月から選定し、挿し木をし、1本菊にするための支えや、手入れ、手間も大変なようだ。それでもその努力がまさに「開花」したときの喜びは一入なのだと想像に難くない。


そして今日、明日香村公民館で講座があり、到着すると玄関先にも立派な菊の花が飾ってあった。やはりほとんどが河合さんの作品だった。
犬養万葉記念館では、門前と会館入り口と、室内と分けて置かせていただいている。河合さんが手塩にかけられた菊の花を私たちだけではなく、来館してくださった方が喜んでくださるだろう。「菊のご紋章」ではないが、日本人に身近な菊の花も年々見る機会が少なくなってきた。風物詩のように各地で見られた菊人形も、限られた場所でしか開催されなくなってきた。芸術的に菊を操る「菊師」が居なくなったからとも聞く。ヘタすれば「お葬式の花」の認識になりかねない。
「私、菊の花が一番好きですねん。香りもいいし・・・」と、おっしゃった河合さんの言葉が忘れられないのだ。咲くと華やかで格調も高くあるが、特別に目立つ花ではなくどこか謙虚で控えめな感じ。これは大いにご本人と通ずるところがあるような気がする。今日から菊の花によって彩られた記念館で、訪問された方々にも「秋の季節」を堪能していただきたいものだ。