万葉花カレンダー5月「ちばな」

令和2年の5月1日は世界ウイルス戦争の戒厳令下のゴールデンウイークの1日となりました。毎日のメデイアの報道にはもううんざりしていますが、ひたすら自己責任を自覚しながら国民としても誠実に生活することを肝に銘じて過ごす毎日です。犬養万葉記念館の休館や、担当している万葉講座の機会が中断していることは大変残念ですが、私自身にとっては「生まれた時間」は大変貴重で、人間が平等に与えられている1日「24時間」を中途半端に過ごしていた生活の修正を補うべく、日々ありがたく過ごしております。ただ実家と仕事場を行き来することの状況は変わらないので、「ウイルスを運ぶ」「人にうつす」ことがないようにと、呵責と緊張感を感じながらの移動は少し重いです。
講座の教材に制作している「万葉花カレンダー」4月の「しの」は越前市万葉館の故地交流展を開催中の味真野苑の写真でした。現地でも4月の交流展がはじまるなり休館を余儀なくされておられましたが、5月19日より開館決定となり、期間も延長して交流展を再開して頂く旨のご連絡を頂きうれしいことです。味真野苑ではこの季節はまさに百花繚乱の「越路の春」。もうすぐ「梅花藻」の便りも聞けそうです。
 さて、5月の万葉歌は大伴旅人の「3並び」の「和菓子」の歌。(と覚えてください。笑)
浅茅原 つばらつばらに 物思へば 古りにし里し 思ほゆるかも  〈巻3-333)
『万葉集』を知らなくてもデパートにも店舗がある鶴屋吉信の「つばらつばら」は知っている人が多い人気の和菓子。お菓子のしおりにもこの万葉歌が記されています。「しみじみ、心ゆくまで」と説明されています。その「つばら」という言葉は「浅茅原」という枕詞に導かれていますが、浅茅はちばな、ちがやと言う草のことです。今ごろ道路沿いなどに白い穂花がそよぐ光景を無意識に見ておられることでしょう。「子どもの頃はしがんだことがある」とおっしゃる方も多いです。つばな→つばらという語感の楽しさを感じさせますが、「つばらつばら」と言う名前と共にいち早く万葉ゆかりの和菓子として有名になりました。この頃は袋パッケージも季節によってさくら、もみじなど趣向を凝らしておられ、なんといっても小豆が好きな方にはたまらない人気菓子です。今でこそ「万葉歌」をテーマにネーミングされたお菓子は多くなりましたが、「つばらつばら」は先見性があったと言えますね。
333番歌は、明日香で生まれ育った大伴旅人が、晩年に故郷を懐かしんで詠った歌の1首ですが、来月には「明日香を愛する」皆さま方にも明日香村へ来て頂ける状況になっていればと思います。記念館では三宅町の花「あざさ」も咲き始めました。
実は1つだけ、今年の万葉花カレンダーのミス(記載漏れ)がありました。この「ちばな」のページです。写真が明日香村岡のエビノコ宮跡の広場で撮ったこと・・・ということを。