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vol.3 〜万葉のふるさとを歌う〜

私の人生の師であり、今日「万葉うたがたり」と言う私のライフワークを側面から方向づけてくださり、支え、ご協力くださった万葉学者で文化功労者の犬養孝先生が、平成十年秋に残念ながら亡くなられた。私が先生に師事できた喜びとお世話になった感謝の気持ちはもはや言葉では言い尽くせない。この作品集をもって御霊に捧げたいと思う。

 甲南女子大のゼミで犬養先生に連れていって頂いた、各地への万葉旅行の思い出は、私たちにとってそれぞれにひたすら楽しく、屈託のない旅であった。学生の時に旅人として自己満足的な印象しかなかった私が、今日「万葉歌を歌う」ことで、各地の万葉まつりや万葉集の朗唱の会などに参加させていただくようになり、再び万葉の旅の機会が増えた。

 日本の各地では、万葉故地だけにかかわらず、歌碑を建立されたり、記念館や公園や植物園を作り、時代を超えた身近な地元の歌として「万葉歌」に親しみながら、「万葉歌」を中心とした町作りが大変盛んに行われている。その様子を見るにつけ、犬養先生と共に、何度か訪れたことのある万葉の故地の価値や意識が、今頃になって私に実感として迫ってきた。

 万葉集の歌われた背景がほぼ日本全国に広がっていることは、それぞれの土地の四季の風情・風土・生活環境の違いなどが歌に表れ、歌人の立場や心情の表現の多彩さが、万葉集の内容の豊かさとなって私たちに魅力のある歌集となっている。故に今回の作品集もタイトルとして「ふるさとを歌う」と揚げているが、取り立てて区別する必要性がないかもしれない。前作の「万葉抒情」も「万葉の四季」もそしてこの度も、「人間恋歌」ばかりなのだから…。

 私たち日本人の心や魂を写し出した、歴史・国文学の原点でもある万葉の歌が今日ブームとなって、もてはやされ愛されることは大変うれしいことであるが、私は特にこれからの21世紀を担う若者や子どもたちに期待をしている。万葉の歌をを正しく理解し、万葉集を愛し、日本の宝としてこの歌集を大事に引き継いでいってほしいと思う。
万葉集が、現代に生きる私たちの生活と、思いがけないほど重ね合わさる部分があり、恋心などは古今東西素直な共感を呼ぶものである。それが彼らの心に浸透していってくれるように、私の歌もその橋渡し役の一つとしてお役に立ちたいと願っている。そして、彼らの手によって日本に限らず、世界中へ、もっともっと万葉集の魅力を伝えていってほしいものだ。



1. サンバ・DE・ツバキ 聞いてみる

万葉うたがたりコンサートのテーマソングは、この曲をご紹介せずにはおられません。リニューアルして演奏しております。

2. 西宮慕情
私の住む兵庫県西宮市周辺にも10首の万葉歌があります。 万葉時代には武庫の浦にも鶴が飛び交っていたなんて…。旅人たちは猪名川野や名次山の景観美に、つらい旅でもひととき心を癒されることがあったでしょう。我が町の誇るべき万葉歌として、伝えていきたいです。

3. 二上エレジー
昭和50年に初めて作曲したこの曲も、この度、大伯皇女の6首すべてで完結作としました。大津皇子の葬られた二上山は象徴的ですが、三重県名張市には父天武を追悼して、大伯皇女が建立されたといわれる夏見廃寺跡もあり、伊勢と大和の距離が心情的に実感できるのではないでしょうか。

4. 宮廷賛歌
平成12年春は明日香村で犬養万葉記念館の開館をはじめ、万葉ミュージアムの完成、そして、NHK連続ドラマ「あすか」で全国に紹介されたように、2000年はまさに「飛鳥時代」が訪れます。 壬申の乱で大勝利を収めた天武天皇と、定めた都「飛鳥浄御原宮」を讃えて、私自身高揚した曲ができあがりました。

5. 荒雄物語
山上憶良が、玄界灘にある筑前国志賀島の白水郎(海人)、荒雄を歌った10首ですが、その左注に五島福江島の三井楽を経て出航したことが記されており、以来遣唐使をはじめ、古代の海路を知る上でも万葉時代の西の果ての故地として注目されました。三井楽町に“遣唐使ふるさと館”も完成し、今後の全国展開が楽しみです。

6. 君待ち草
万葉集中で伝承時代の歌として、最古の歌である磐姫皇后のこの4首は、大阪府堺市にある、巨大な前方後円墳に葬られていらっしゃる仁徳天皇への恋歌でした。記紀に仁徳天皇の華やかな女性関係と、磐姫の夫への嫉妬の物語が描かれていますが、まさに万葉恨み節といえるかもしれません。

7. 大我野のテーマ
大和から紀の国へ向かう旅人たちは、期待と不安な思いを交差させながら、峠越えをしていきました。和歌山県は風光明媚な海岸を賛美した万葉歌が多い中、橋本市では地元の10首の歌をもとに、貴重な「神代の渡し場」などの景観保護に努められたり、平成6年からは橋本万葉まつりを始められ、毎年11月23日に行われています。真土山・大賀野・妻は今も地名にその名を残し、万葉まつりのテーマとなっています。

8. 狭岑島挽歌
古代人の「死」に対する畏怖感は、たとえ行きずりの人であっても死者に対して手厚い鎮魂の意を表しました。瀬戸内の船旅をしていた随行歌人の柿本人麻呂は岩場にうち寄せられた漂着死体を見て、挽歌を詠みました。香川県坂出市沙弥島は、瀬戸大橋の橋脚近くにあり、野の上のうはぎとは「よめな」という華麗できれいなピンクの花です…。

9. 梅の園
天離かる鄙ではありましたが、大伴旅人と山上憶良により、太宰府を中心とした筑紫花壇が発展し、万葉集中でも特筆すべき素晴らしい歌の数々が生まれました。私は特に万葉人の好んだ梅の花と、梅花の宴を意識して大陸文化の香りの漂う歌をひたすら表現してみたかったのですが、如何でしょうか?

10. 石見シンフォニー
柿本人麻呂の長歌・反歌の構成上から、歌のイメージもシンフォニックにということで、“恋歌Vol.1”で「石見シンフォニー」をご紹介しました。今回は東京で活躍中の作曲家町田治氏にお願いして、本格的な交響曲に編曲して頂きました。音楽と共に、島根県の広大で静謐な石見海岸がハイビジョン映像のように目の当たりに浮かんで来ます。

11. 明日香風
恩師犬養孝先生は全国の万葉故地を守るべく、歌碑となって大地にたたずんでおられます。その最初の碑が明日香の甘樫丘にあります。宮廷賛美をした宮から藤原宮へ遷都のあとに、志貴皇子によって詠まれたこの歌は、飛鳥古京への追憶だけではなく、飛鳥風に袖を翻す采女の姿に母の姿をもなつかしく重ね合わせていたのではないでしょうか。

12. 祝婚歌
作者不詳で歌い継がれたこのラブソングを、弦楽四重奏でラッピングをしました。時季はずれになってしまった、万葉のクリスマスプレゼントとなりました。私からあなたへ、音楽のぬくもりと共に、心のぬくもりが伝わりますように。万葉人の心情に触れることのできる大好きな万葉歌です。

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