あざさの里、三宅町にて。

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写真は、『万葉集』の1首にしか見られない、水草の植物「あざさ」の鮮やかに美しく
咲いた様子です。花の季節は、7月頃から9月頃までの「夏」の花です。
奈良県磯城郡三宅町は、いわゆる大和国中(くんなか)といわれる、大和の中央部の平野
ですので、「大和のへそ?!」とも言われているような…。
このあたりへは、犬養先生とともに学生のころから万葉旅行で歩いたことがありましたが、
竹田の庄や、三宅の原、百済寺など、周辺に犬養先生の歌碑が建立されてからは、たびたび
一人でも訪れていました。
このたび訪れた三宅町は、巻13の問答歌の中に「うちひさつ 三宅の原ゆ…」と
明確に「地名」が詠われていることから、地元でもこの万葉歌が意識されていたようです。
平成8年に犬養先生の揮毫により建立された歌碑は、当初杵築神社の境内に設置されたのですが、
わかりにくせいか、翌年神社から、道路沿いの場所に移設されました。
最近では犬養万葉顕彰会で行った記憶がありましたが、それでも数年以上前になるかと
思います。
寒い日でしたが、早くに到着したので、少し散策してみました。
なんと、歌碑の周辺は、すっかり整備されていて、「あさざ」の池がいくつもあったり、
三宅町の案内・説明板ができていて、歌碑とともに象徴的空間になっていました。
また、すぐ近くの三宅町役場にも「あさざ」の池や、あさざマスコットキャラクターの
みやっぴい!など、石材でできたシンボルゾーンなどもできており、「お~っ!」
おもわず歓声をあげるくらい、「あざさ」の存在が目につきました。
そして、歩いていくうちに、いくつもの民家の前に立て札をして、あざさのフラワーポットが
置かれており、まさに町を挙げて「あざさ」を大事に植栽しておられる様子を見ることができ、
驚き以上に感心しました。
「三宅の原」の歌ですが、その歌の中に歌われた万葉の貴重な花「あざさ」(今はアサザと
呼びます。)に注目して、今や三宅町の町の花として大事にされていることを確認し、
犬養先生の歌碑が建立されて以来、より活気ある町となっていることをうれしく思いました。
そして、土地の鎮守の神様「杵築神社」に敬意を表した後、犬養先生の歌碑にご挨拶してから、
講演会場「三宅町歴史講座」に行きました。場所もやはり!「あざさ苑」という名のついた
多目的福祉会館でした。
「歴史講座…」と、私には大層な名目ですが、この万葉歌を私は20年以上前に作曲をして
おりましたので、「夏野の恋歌」として、機会があるたびにみなさんに既にご紹介をしてきました。
偶然地元の方が、「すでに曲となって歌われてる」という情報を明日香村の
伝統芸能保存会の前会長の勝川さんから聞かれたそうで、私に音曲の問い合わせがあったり、
楽譜の購入があったり…とその後やり取りがありました。
そのご縁で、今回私に「夏野の恋歌」の万葉歌を説明してほしいとお声がかかったような
次第です。
しかし、私が話を始める前に、「歌と踊り」があることを聞いていましたが、なんとなんと
わざわざCDと同じように「夏野の恋歌」の伴奏をコピーされ、私たちが歌っている通りに、
美しいドレス姿の婦人コーラスの方々が歌ってくださいました。そして、その中を華やかな
万葉衣装を着られた男女の方々が、その「夏野の恋歌」に合わせて踊ってくださったのです。
私は感激、感動の何物でもありませんでした。拍手喝采しました。
踊りは1年かかりで振付をされたとか??? みなさまご準備を本当にありがとうございました。
こんな風に私の歌が、万葉故地でそこのみなさんに愛唱されるほど幸せないことはありません。
そしてオープニングでこのような歓迎を受け、私は作曲・活動冥利に尽きる思い…を
しみじみ味わわせて頂きました。本当にありがとうございました。
その後の私の話など、なくてもよかったかも…(笑)。
思いがけなくよい機会を頂戴し、ありがたく存じました。
三宅町は奈良県下でもっとも小さい町とか。それだけに「結束」や「まとまり」もよいのでしょうか。
コーラスや踊りの方々もみんな「あざさ」の飾りをつけておられましたが、町中に「あざさ」
の花や言葉があふれ、黄色の大変鮮やかですが、可愛い花が三宅町の「うらぐはし児」を
ひきたてているようです。
私がもう一つ感心したのは、兵庫県稲美町では、天満大池をはじめため池で、あざさを
積極的に植栽されており、その貴重な絶滅危惧種の「あざさ」を地元で守り、アピールする
べく、私も協力してコンサートで万葉の歌やあざさをご紹介したり、積極的にあさざの
お話をしてきた経緯がありますが、ご紹介してもあざさが稀少植物なので、さすがに
知らない方も多い花です。それが、三宅町では町民で誰一人知らない人はいないような
「取り組み」とアピールの状況について、ぜひ稲美町の方々に三宅町の現状報告をしたいと
思いました。
「あざさ」の髪飾りは、私たちも万葉うたがたり会で制作し、時々頭に着けています。
三宅町でまたコンサートでもさせて頂く機会があれば、ぜひご披露したいと思います。
私たちのあさざは「大きすぎて」びっくりされると思いますが…(汗)。
犬養先生の歌碑とも会えたし、万葉故地が生き生きとしている様子を拝見して、久しぶりに
ほっとしたというか、ほのぼのとした喜びに満たされた1日でした。
そして、三宅町のみなさんには、これからも「夏野の恋歌」をいるまでも愛唱していって
頂きたいな…と心から願いました。


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