久しぶりの嘉摩の里へ

1週間たった今日、北九州地方では、大雨の報道がなされていて、平成16年の大洪水や、
昨冬の雪害など、時々大きな天候災害に遭遇する地域なので、何事もなければいいが…と
気になっている。
1週間前の6月4日は、梅雨間であったが、大変恵まれたよいお天気で、堺の除幕式と重ならない
ことで、前日から福岡県の飯塚市へ出かけた。
目的は、尊敬する万葉学者の大久保廣行先生の講演会があることを知り、是非聞きたかったのだ。
大久保先生は、山上憶良のご研究に深いことから、平成17年の嘉摩万葉フォーラムで、多岐に
わたりご指導やご協力を頂いたご恩もあるが、昨年の12月の中之島のコンサートのDVD を
見て下さり、その後ご丁寧なお頼りと共に、私が舞台で紹介した「熊凝」や、大伴旅人の
讃酒歌について大久保先生が書かれた論文をわざわざ同封して下さったり、いつもながら本当
に誠実で、温かいお人柄に、こうしてご縁を頂いていることを恐縮にまた光栄に存じている。
講演会は、「旅人の想い―最期にまつわる花、梅と萩と」という興味深いタイトルで、もちろん
「梅花の宴」の梅、萩を意識しながら亡くなった旅人を思い、どのような内容だろうかと
楽しみに聞いたが、さすが、大久保先生らしい時代背景や、旅人を中心とした人間関係の
紹介や、太宰府や憶良との出会いなど、丁寧に説明があり、その上で、大久保先生が、近年の
テーマの1つとして研究されてきた、旅人・憶良の老境や病・死に対する二人の文学上で
読み取れる生き方、今回は特に旅人の最期について、「萩」は心のふるさと、明日香への回帰
であったことを学び、望郷は奈良ではなく、たましひの安住の地は「明日香村」であったのか!
とあらためて考えさせられた。昨近、90才を過ぎた認知症の大叔母が、名前を問われて
家族みんなが忘れていた、嫁ぐ前の「旧姓」のフルネームで答えるというのを聞いた。
無意識になっても「私」は、なつかしい子供の時の世界に立ち帰るのだろうかと思ったばかり
だったせいもあり、旅人の話に、妙に現実的な臨場感を覚えた。
「恋」もしかり、学生のときには『万葉集』で、犬養先生のお話を頭で理解することはできても
ピンとこなかった「心情」の部分が、今、「老い」についても、自分が年を重ねることで、
新たな理解ができるようになる。『万葉集』は読み手によって違う輝きを放つ、不思議な書物だ。
大久保先生ありがとうございました。時間的に忙しかったけど、行ってよかった!!
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気持ちの良い朝、講演会の前に、遠賀川周辺を散歩をした。土手には「ツバナ」がいっぱい
そよいでいた。万葉の「浅茅」「茅花」である。ここは特徴的だ。
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国土交通省の河川工事で、整備とともに建立された万葉歌碑2基。芳雄橋をはさんで旅人と
憶良の歌碑が建てられたことから、歌碑の近い方に「憶良口」(上)、「旅人口」(下)と
名づけられていた。
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橋から望んだかつてのボタ山も、年数が経ち、緑が定着した普通の「山」になって、新緑が
美しかった。 
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遠賀川も大規模な河川工事を経て、静かで美しいたたずまいをみせている。
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川のほとりにはベンチがあったり、ゆったり流れる時間を感じるスペースになっている。
飯塚市のイラストマップがあった。
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これはマンホール。万華鏡の模様のように色がきれい。このモチーフは市の花「コスモス」と
関係ありか???
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散歩の最後に寄ったのが、「スーパーASO」。そう、ここは麻生元総理大臣の故郷であり、
「麻生」関連の名のつく事業も多い。病院もあるし、スーパーの買い物ぶくろに明記してあるか
どうかなと、とりあえず買ったのが対馬の藻塩。目的の「袋」にASOの印字が…(笑)
いつもながらに好奇心満々のオカモです。
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おまけは、久しぶりの博多駅。九州新幹線の開通後、初めて到着。新幹線の掲示板に見覚えの
ない「さくら」や「つばめ」の表示が…。おー、感動!次回は鹿児島までのってみたいものだ。
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大久保先生の講演を拝聴したあと、篠原さんご夫妻のご厚意に甘え、一緒に歌碑散策へ。
飯塚・稲築・桂川町から大宰府の坂本先生の新歌碑探しまで、限られた時間だったが、
おつきあい頂いた。次はそのご報告です。

椿市のご紹介

本日は、6月8日!
8のつく日は「椿市」の日として、サロン開始当初から「賑わいの日」と決めて、午前は
サロンで「市」を、午後からは映像を楽しんで頂く時間として、解放しています。
お茶代くらいは…と500円を設定していますが、もらいそびれていて…。(汗)
これが、会社経営の立場として「甘い!」と周辺から指摘される一因でもありまして・・・とほほ。
さて、本日は少し中身を紹介。
犬養先生の著作本です。
高齢になられて、欲しい方に…と持ち込まれたものや、私の余剰本で、『万葉の旅』3巻や、
犬養先生のサイン本「万葉魂の歌」もあります。あと、万葉かるた(旧、ブテック社制作)
や、100年祭記念に制作した「犬養孝揮毫の万葉歌碑」や、「万葉の里」は、顕彰会預かりで
販売中です。
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また、万葉集関連本として、和田嘉寿男先生が魂と気力で書き続けておられる『万葉集巻3を
読む』
(巻4、巻6もあり)や、坂本信幸先生監修の『万葉の歌人セミナー5、大伴旅人・山上憶良』
、保育社の「万葉の歌・明日香、橿原」などがあります。
そして、スマイルゼロ円では、「私と犬養先生」(顕彰会出版)もあります。
また、茨城県の万葉歌碑を網羅された有馬潔子著「時のかけはし」(サイン本)や、
大阪大学工業会(OB)の東山良彦さんのスケッチ画集など、岡本三千代とゆかりの方々の
素晴らしい著作をご紹介しています。
もちろん、岡本三千代と万葉うたがたり会の作品集や、TSUBAICHIグッズなども…。
春から、犬養万葉記念館の宣伝も兼ねて、富田利雄さんスケッチの一筆箋を季節ごとに
楽しめるように置かせて頂いています。
一時は、「市」と言うことで、手芸品や、家庭での不用品なども机に賑わっていました。
なんでもOKですので、委託、譲渡、交換・・・「お宝」の有効利用できる場所として、ご利用
頂ければ何よりと思います。
私の希望は、たまに明日香村をはじめとして、故地をアピールする物販などもできたらいいなあ
と思っています。安くて新鮮な野菜だったり…。ベニバナや、赤米の穂などをみなさんに
お見せしたいと思っているのです。
さあ、今日は店じまい。来れない方には、ネット販売も受け付けます(笑)。
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蘇鉄山

このたび、難波津に建立された万葉歌碑は、標高6.84mの日本一低い山と言われる、堺市
大浜公園の中にある築山の蘇鉄山の上にあります。
山頂には登録名が大浜公園の一等三角点があり、みなさんが日本一低い山だと認識される
天保山は、標高4.53mでやはり低いですが、二等三角点で最も低い山と言われていて
・・・!?、まあどっちもどっちですが・・・(笑)。小高い場所でした。
フォトギャラリーでご紹介もしていますが、堺市のロータリーの事業として、今回の
万葉歌碑建立でいくつかの希望が託されていました。
遣唐使の母の歌、
旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 吾が子羽ぐくめ 天の鶴群 (巻9・1791)
の「言葉」にあるように堺市民を「羽ぐくむ」ことから「育む」意までの思いや、また
大浜公園の石碑文「擁護璽」のある蘇鉄山を選ばれたのは、3月の東日本大震災に遭遇した
ばかりの日本で、今後、南海地震や東海地震などの危険予知のある昨今、かつての堺市民の
教訓から、無事に助かったことが記された碑のあるこの場所に建てる意義などのご紹介も
ありました。そして、私たちは命がけで、国使として役目を帯びた遣唐使たちが出発した
難波の港に、同行するわが子の無事を願い、思いやる母の歌が歌碑に選ばれたことを嬉しく
思いました。山内さんの説明を聞き、臨場感が迫り、胸がよりいっぱいになりました。
犬養先生、おめでとうございます。そして、この地で、また大地に踏ん張って、万葉人の
心を語り続けてくださるのですね。ひょっとして、津波も両手を広げて遮ってくださるので
しょうか。日本のふるさとの守り神です。
ロータリークラブは、犬養万葉ファンがこんなに参加されるとは、夢にも思っておられなかった
ことと思います。このギャラリーの多さ!(笑)。除幕式が晴れがましいものになりました。
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除幕の写真撮影のラッシュはすごかったですねえ。竹山修身市長は、公用で遅れて来られた
のですが、この想定外の賑わいに驚き、喜ばれたことと思います。
先日TSUBAICHIでお目にかかった私? 思いだしてくださいましたか。
犬養万葉歌碑でお世話になるのは、故、幡谷市長、前木原市長に続いて3人目ですが、
是非、ご理解頂き、仁徳天皇陵のある古代史にゆかりある磐姫の歌碑があること、高石市から
移転した高師の浜の歌碑も含めて、万葉故地としても認識を深めて頂きたいものです。
除幕式に参列のロータリアンの背広姿と対象的だった竹山市長のアロハ姿! びっくりしました。
なんとスーパークールビズの最先端だそうで、堺市が販売して2日目のアロハシャツを着用。
市の花、ハナショウブ柄に「堺」の文字も入っています。お相撲さんの浴衣みたいな気も…。
いやいや、ごめんなさい。ユニークなグッズでした。
それから、犬養先生の歌碑の除幕式に、私たちTSUBAICHIでバス調達をしましたので、
初めて父も参加しました。
昼食後、大仙公園の磐姫皇后の歌碑、高師の浜の歌碑めぐりもしました。
せっかくなので、わがパパショットです。
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高師の浜では、山内さんの傍でしっかり説明を聞いて、よくわかった!と喜んでいました。
私は参加してくれて感謝です。喜びを共有できる時間をもてましたもの。
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予定通り、4時までに大阪で解散できました。バス手配から、総世話人代表の山寺さんには
いつもながら、感謝・感謝です。言い出し兵衛の私の思いをいつも実現してもらえることは、
本当にありがたいことです。オカモはすでに、次の列車に乗り込んでいますし…。
山寺さん、またよろしくね(笑)。

コミュニテイデザイン、山崎亮さんに期待!

29日、久しぶりに「情熱大陸」を見た。
いきなり家島だったり、五島列島の福江島の半泊の地元活性の着手の様子だったり、
私の身近な万葉故地の意識の範疇の地域が映し出されていた。
家島は、遣新羅使人の
 家島は 名にこそありけれ 海原を 吾が恋ひ来つる 妹もあらなくに(15・3718)
の帰路の歌にも詠まれた「島」で、犬養孝先生の揮毫歌碑もある。
私も何度か訪れたことがあるが、播磨灘に浮かぶ家島諸島は、ちゃらんぽらんの大西浩仁さんも
行き来しておられたので、家島の民宿のご主人ともご挨拶をさせて頂いたことがある。
家島は漁業の豊かなところだが、島のおばちゃんたちがNPOを立ち上げ、海産物の商品化と
販売に活躍されていた。まずその協力者が山崎さんであったのだ。
番組では、またまた私には興味深い五島列島。限界集落の活性化の相談を受けて、山崎さんが、
地元住民をヒアリングしたり、人間関係を構築しながら、半泊地区の今後を考えていく様子
がレポートされていた。浜口さん…と言う名前は、地元には多い苗字で、私がお世話になった
浜口神父様も五島の出身で、浦頭教会にご家族が所属しておられる。そして神父、シスターを
数多く出された浜口神父の系図が、堂崎天主堂に掲げてあったことがなつかしい。
半泊教会も私は、ドライブで聖堂訪問した。
五島列島の映像は美しかったが、実際の海、島山、空、本当の美しさを体験した私たちは
今でももう一度行きたい万葉故地NO!である。
番組で懐古の思いも重ねながら、また、山崎さんの手がけておられる「コミュニテイデザイン」
という「言葉」「仕事」があることを初めて知ったが、私が一握の砂として、平成の大合併
後の万葉故地の地域活性の方向を考えている時に、救われたような気がした。
若き37歳。人と土地との繋がりを地域の特性に合わせて、新たなまちづくりに活用していく
デザイナーとしての山崎さんの今後の活躍を応援したい。若ければ門をたたいて共に協力
していきたいと思った。(笑)
もう一つ、もうあとのまつりだが、「私」の大学院での目的意識を今頃確認できたことだ。
山崎さんは、一線で仕事をするかたわら、東京大学の大学院で、論文をせっせと書いて
おられる。それは、画一化していない、いろんな地域・場合でのコミュニテイ・デザインの
経験を通して、論文に1つづつまとめていかれることが、ご自身のフィールドワークとして
ランドケープデザイン(周辺環境との調和に配慮した設計)が、新たに学問分野でも
認められていく実証の方法だからだ。
そっか~、私も「万葉うたがたり」を通して、活動の意味や、関わった万葉故地との関係や、
万葉故地の変化や、状況など、いっぱい「私の目」を通して考え、語れることがあったでは
ないか。「社会人として自分の実績を形にすること」そして、『万葉集』との関係において、
奈良女子大学なら、人文社会学科的要素であるが、山崎さんをお手本にするなら、再び
大学院で、実績をまとめ、研究論文に起こすことは、私にとってもっと身近な題材だったの
ではないかと思った。もちろん3年間の在籍は、『万葉集』研究の最前線を確認することや、
勉強手法の獲得や、いっぱい得るものはあったが、ブランクで、継続研究テーマがなかった
ので、「修士論文」だけが、浮き上がってしまったことが今でも悔やまれるのだ。
しかし、私にとっても新たな光明を得て、嬉しかった。
山崎さんの手がけられた福江島・半泊の今後を興味深く見ていきたい。
そして、私も五島列島に行き、大好きな、三井楽の方々に会える機会を期待しながら…。